春を告げる天使たちが降りてきた

春を告げる天使たちが降りてきた

「猫のまんま」春の段スピンオフstory

春を告げる天使たちが降りてきた
  春の段のシーリーズの最終章としてスピンオフのstoryにしました。このお話は実際にあった不思議な出来事です。夏の段は間も無く連載開始予定です。

 

まだ寒い日が続く3月初旬の唐津

仕事も多忙を極めて、出張も目白押しだった。当時は1匹のおっとりとした性格の太郎という名のアメショウと暮らしていた。日々仕事に追われ出張から帰宅したある日、すごく息苦しそうで呼吸も早かった。普段、健康診断などで慣れているはずなのにその日はケージに入るのもすごく嫌がって、今まで聞いたこともないような大声で鳴いた。病院に連れて行き、診察してもらうと心不全と肺に水が溜まって呼吸困難になり、酸素室に入れなければならないとのことで緊急入院。

夜動物病院から電話がありとても危険な状態だとのこと。急いで行くと先生はこのまま預かって治療を続けるか、自宅に連れ帰り最期を看取ってやるかの選択を告げられた。治療を続けることでほんの数パーセントの可能性があるならばと先生にお願いして帰宅した。心配で心配で胸が潰れそうだった。早朝に声を詰まらせた先生から亡くなったとの電話があった。

覚悟はしていたものの、出張の前日までデスクのpcのキーボードで寝ていた元気な姿の記憶が浮かびとても信じることはできなかった。

病院に到着して先生が声を詰めらせて「力が及びませんで、、」

もう、後の言葉は聞こえなかった。体を撫でてやるとまだ温かく、寝てるようだった。

家に連れて帰りセーターを巻きずっと添い寝した。目がさめるときっといつものように手をペロペロと舐めて甘えてくるだろうと信じて眠った。

目が覚めると窓の外は3月らしくない吹雪。太郎を抱きかかえてみたら

硬直して冷たくなっていた。

 

太郎が虹の橋を渡り、山寺で小さなお葬式を済ませた3月の中頃。

仕事から帰っても玄関に走ってくる姿はなく、処分しきれなかった餌の器が一つポツンと置いてある。部屋の掃除をしていると一人で留守番していた時に遊んでいただであろう小さなぬいぐるみやボールが出てきた。それを見て

ずっと涙が止まらなかった。

 

 

最初の天使の訪問

それから1週間経ったころ、夜、玄関の前で猫の鳴き声がするのを聞いた。

驚いてドアを開けてみるとキジトラのメス猫がちょこんと座っていた。

すぐに室内に走って来て、太郎の餌入れの前に座ってご飯を催促するように大きな声で鳴き続けた。お腹が空いてるのかと思い、これも捨てきれなかった餌をあげた。

すごい勢いで食べつくし、台所から室内を歩き回り玄関の前に戻り、開けて欲しいような声をあげたのでドアを少し開けるとさっと外に出て行ってしまった。

途中、何度も何度もお礼を言っているかのように振り向きながら立ち止まり、立ち止まりしながら帰って行った。

 

野良猫でお腹が空いていたのかなあと思いながら、もうこないかもしれないけど餌は捨てずにとっておこうかと思い流しの下の物入れにしまった。

その猫のことも忘れかけていた3週間後の夜、また玄関で鳴き声がした。

ドアを開けてみると前回の猫だった。前と違いお腹が大きく膨れている

妊婦猫だったのだ。

前と同じように餌をたくさん食べ、水もたくさん飲んだ。

暫くすると前と同じように帰るんだろうと思い、玄関を少し開けたが帰る気配がない。玄関まで連れて行っても一向に帰ろうとしない。そのままベットに上がりスヤスヤと寝てしまったのだ。夜中、目を覚ましてみると僕の肩のところにうずくまりスヤスヤと寝ていた。

朝方、会社に行く準備をして玄関を開けるとその隙間からさっと出て行ってしまった。今度は外に出て暫く座ってこちらをじっと見ている。車に乗り込んでも外でじっと見つめていた。

夕方帰ったが、その猫はいるはずもなく、夜玄関前で鳴く声をきくことも無くなった。

 

 

 

春を告げる天使たち

4月になり、久しぶりに暖かい日がやって来た。

近くのコンビニに買い物に行き、普段は通らない裏道を歩いていた時、近所の足の悪いおじいちゃんがいつものように歩行機を使いゆっくりと河岸を歩いている。挨拶をしようと思い近づいてみると、猫が数匹おじいちゃんの前後を取り囲み、歩く速度に合わせるかのようにつかず、離れず一緒に歩いている。

犬なら珍しくもないが、猫がねえ、、、。と思い、挨拶と猫たちの頭でも撫でてやろうと思い近かづいてみると以前うちの玄関先で鳴き一晩泊まって行ってくれたあのキジトラのメス猫だった。3匹のそっくりの子を産み、4匹でおじいちゃんと一緒に歩いている。

「元気な子供を産んだんだなあ」と嬉しくなっておじいちゃんへの挨拶もそこそこに頭を撫でてやると4匹皆に首輪がついていた。

「飼われてるんですか?」と聞くとおじいちゃんが「家の床下で子供を産んでいたようだったから家に入れてやったら、ずっと居着いておると」と嬉しそうに答えてくれた。

「名前はあるんですか?」

「福ってつけたよ、子供達は桜・桃・太郎」

「え、太郎?」

「1匹だけ男の子やったから思い浮かばなくて太郎にしたとよ」

涙がこぼれた。

「おいがさ、リハビリがてら散歩に行く時も、こん子たちはちっとも離れんとさ」おじいちゃんも嬉しそうに猫たちの頭を順番に撫でた。

河岸の桜は三部咲きと朝のニュースで言っていた。

 

コンビニで買ったお茶を飲んだら、また涙がこぼれた。

 

「春の訪れを告げる天使たちのせいだ」と独り言を言った。

 

「太郎、そっちも桜が咲いたかい。」

 

 

 

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・・・・続き

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