「猫のまんま」秋の段1

20171001wrote

窓際族【まどぎわぞく】出典:ブリタニカ国際大百科事典
窓際族とは出世ラインに乗れなかった中高年サラリーマンの中で実質的な仕事を与えられず、遊軍的な立場に置かれ窓ぎわの席で日々新聞を読んだり外をぼんやり眺めて1日を過ごしている人たち。

<新解釈>窓際族【まどぎわぞく】 :松永解大辞典より
一日の大半を日差しが入る窓ガラスのそばに座り心地の良い場所を選びゴロゴロとする猫たちのこと。確実にご飯のお誘いの呼び声がかかるまでは微動だにしないので飼い主から死んでるのではないかと思われ、呼吸の有無の確認をされるような状態の猫たち。特に晩秋から春にかけてはこのような状態になることが多い。

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「ねえ、きいちゃん。最近、空気や風の香りが変わったことに気づいた?」

 

「うん、夕方にお隣から魚を焼く美味しそうな匂いが増えたよね。」

「も〜そうじゃなくて。空気が澄んでるっていうかさ、たくさん息を吸い込んだ時に
胸のあたりが少し冷たくない?」

 

「こないだまでは、そいと追っかけっこするから寝てる父ちゃんから怒られてたもんね。でも最近はもう少し寝てたいよね。」

「そうそう、少し寒いもん。朝起きた時にあくびするとお隣の庭にある沈丁花のいい香りがするしねー。」

「へえ、沈丁花ってよく知ってるなあ、おいら父ちゃんの行くトイレの香りとよく似てることぐらいしかわからないや。」

「父ちゃんがね、窓をあ開ける時。『そい、良い香りがするだろう?沈丁花って言うんだよ』って教えてくれたんだ。花言葉は「不滅」とか「永遠」なんだって〜」

 

 

「、、、、?、、、、、あれ?きいちゃん?」

「おいら美味しいものしか興味ないから、そんなことどうでもいいの。最近、おいらたち玄関の横の窓のとこにいるからいろんな人が通るのがよく見えるね。おやつとかさ時々くれたらいいのになあ。」

「お隣の、おばあちゃんこないだじっと僕らのこと眺めてたから怖かったよ。ネガネをずらして、じ〜っと顔覗き込んでたもん。」

 

「おいらこないだ 『シャー』って言ったら、おばあちゃんびっくりしてたぞ。」

「へっへっ。」

「ダメだよ、きいちゃん。驚かしたら。父ちゃんに時々おやつ持ってきてくれてる人なんだから。」

「おやつ?ええ〜おいら食べてないぞ。」
「人間のおやつだよ、きいちゃん。父ちゃん甘いものが好きなんだって。」
「父ちゃんもダメだなあ、なんでお魚とかお肉とか貰わないんだろう。そうすればおいらたちも食べられるのになあ〜。」

「僕らがいい子でおばあちゃんに甘えてたら、そのうちきっと僕らにもおやつくれるよ。」

「よし!かわいい声で鳴く練習しなきゃな。」

「ウニャウニャ〜、ウニャウニャ〜。どうだい?そい?」

「ウニャウ、、、、。」

「きいちゃん、気持ち悪い!」

「、、、。」

 

「そういえば、こないだは黄色い帽子をかぶった小さい子もおいらたちのことのぞいてたぞ。」
「なにか同じような子がぞろぞろ来てたよね。」

「父ちゃんも黄色い帽子被ってたのかなあ?」

「子どもの頃はきっとそうだったんじゃなあい?でも、父ちゃんももう少ししたらあのおばあちゃんみたいに顔にシワがよって腰が曲がってくるんだよ。」

「ぎゃ、それダメだよ。おいらたちのご飯は機敏にさっさと出して貰わなきゃ。」

「そうか、じゃあおいら父ちゃんの顔にシワがよらないように朝と夜、顔を舐めてやろうかなあ。」
「うん、じゃあ僕父ちゃんの腰が曲がらないように、フミフミしてあげようっと。僕たち父ちゃん好きだもんね〜。」

「うんうん、きっとおやつの量も増やしてくれるぞ。」

 

「それはそうと今日、ほとんど僕たちここから動かなかったね。」
「だって、ここ気持ちがいいもん。」

「もう、お空が赤くなって来たよ。」

「毎日、こうやって時間がゆっくりと過ぎて行くのっていいよね。父ちゃんもたまには僕たちとこうやってゴロゴロ日向ぼっこしていればいいのに。そうすれば、顔にシワが刻まれて行くのもゆっくりとなるのにねえ。」
「そうだな。」

 

「きいちゃん、父ちゃんさっき台所でごそごそしてたから、晩御飯かもよ!」

「うん、、、。」

「どうしたの?」

 

「おいらたちの1年と父ちゃんたちの1年って同じはずなのに、どうしておいらたちが年をとって行くのが早いのかなあと思ってさ。」

「それが僕たちが神様から与えられた時間なの。だから、大事に過ごさなきゃいけないの。」

「そういうもんかんなあ。ま、おいらは美味しいもんがず〜っと食べられればいいけどさ。」

 

「きいちゃん、僕、ご飯かどうか見てくるね」
  スタタ、、、。

 

 

「そうか、木々にも、鳥たちにも、そしておいらたちや父ちゃん、おばあちゃん、黄色い帽子の子供達たちにも同じように時が移ろうんだなあ神様は生きていることをちゃあんと自分の目や耳や鼻で感じるようにして下さってるんだ。」

 

「あ、風の流れがが変わった。沈丁花って言ったよな。この香りは」

「、、、、、、、。」

「おいらってば詩人猫だな。ふっ。」

 

「きいちゃ〜ん!父ちゃんがご飯用意できたってよ。晩御飯はおかかの香りのカリカリだって〜」

    シャキ〜ン!

「うほほ〜い、すぐ行く〜」

  ドテドテドテ、、、。

 

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・・・・続き

 

秋の段2「ガン見すれども、、、。」はこちら↓

「猫のまんま」秋の段2


 

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