唐津の頑固爺「富田秀敏」さん

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唐津の頑固爺「富田秀敏」さん

佐賀県唐津市浜玉町:富田秀敏さん
佐賀唐津市浜玉で代々続くミカン農家の三代目。ハウスミカンや温州ミカンの市場のニーズの減少に見切りを付けて、未だ世に出ていない新しい果物や野菜を栽培することに奔走。試行錯誤を続けながら「仏手柑」「ビオレソリエス(黒イチジク)」「キング(青イチジク)」「ゲンコウ」「ベルガモット」「トピナンプール」「ヒカマ」等の珍しい農産物の栽培を手がけています。壮絶な半生をかけた新しい農作物は徐々に認知され始め、今やイチジクの名生産者として注目を浴びるようになりました。ご長男も後継者として決まり、富田さんの更なるチャレンジは現在も進行中です。

 

佐賀県唐津市の浜玉町:玄界灘の海風と日当たりの良い山の斜面を利用して半世紀以上も蜜柑の大産地として有名になりました。山を下りた平野部ではビニールハウスの施設で「ハウスミカン」や「いちご」「アスパラ」が栽培されています。昔、最盛期にはミカンの選果場や出荷場は大型トラックが列をなし全国の市場に向けて連日出荷されていたのですが、昨今みかんの需要が減り昔のように箱買いして、こたつで家族がミカンを剝くことは少なくなりました。寂しいことですが子供たちは「皮を剝くのが面倒」とも言うそうです。時代の流れと共に新しい柑橘の品種の栽培を目指し「デコポン」や「清美オレンジ」「ブラッドオレンジ」などが栽培されるようになりました。最近では「はまさき」という高級柑橘類が全国的にも注目を浴びています。このミカンは清美オレンジとアンコール、更にマーコットオレンジを交配した新品種です。見た目は温州ミカンにも似た感じですが味覚はまさにカクテルオレンジのようです。特徴は果肉の密度が高く重量感があり、瑞々しくて、とてもジュシーで甘く果肉を包んでいる内皮が非常に薄く、皮が口の中に残りません。

十年前位から九州北部のフルーツの里として「柿」「梨」「ブドウ」「柑橘「ブルーベリー」そしておそらく栽培の南限になる「林檎」も栽培されています。

 

              

 浜玉町平原地区;日当たりの良い山の斜面に広がるイチジクの圃場

 

出会いは「レモン分けてください」から始まり、10年以上のお付き合い。

富田さんとの出会いは僕が唐津で産直の仕事をしている頃でした。糸島に移住したあともお世話になり、十年以上のお付き合いになります。当時の富田さんのご自宅近郊はハウスミカンやレモンの栽培もあり、グリーンレモンを懸命に探していた時に「変わった生産者さん(笑)」がいるから会ってみたら?とご紹介をいただいて、恐る恐る富田さんに会いに行ったのです。もちろん、レモンはご用意して下さったのですが「見せたいものがある」と言われ30分で失礼するつもりが2時間も長居する羽目になったのです。それが「ビオレソリエス(黒イチジク)」との初めての出会いでした。僕は当時、イチジクといえば福岡の「とよみつひめ」くらいしか知らなかったのですが、食べてみるとその「濃厚でねっとりとした甘さ」に驚きました。皮を残して捨てようとすると「おまえは全然分かっていない!」と怒られ(笑)ました。それは黒イチジクの濃い紫の果皮にはポリフェノールがたっぷり含まれ、通常のイチジクよりも可食部分が多いからだったのです。

しかし、出会った頃はそんなおいしいイチジクも未だ世にほとんど出回らず、価格も通常のイチジクの倍ほどするのでまさに「高級イチジク」だったのです。福岡に近い唐津では「とよみつひめ」のブランドに負け、なかなか日の目をみないだけでなく、高価格(希少生や手間を考えると普通の価格だと思いますが)が故に販売先も見つかリませんでした。そこで、ケーキ屋さんやスイーツの店を手始めにサンプルを送ったりフランス原種ということもあり(ビオレソリエスの冷凍やドライは輸入品として出回っていました)レストランなどを中心に提案を続けていました。そんな中、某テレビ局で「ワインに合う食材」と言う番組で取り上げてくださるお話しをいただき「鴨肉と合わせたお料理」として紹介されました。(ゲストの「はいからさんが通る」の作者、大和和紀が絶賛して下さいました。)これを機にいろいろなメデイアに取り上げて下さり全国からご注文をいただくようになり富田さんの「ビオレソリエス」が脚光を浴びるようになったのです。今では全国からお取り寄せのご注文が後を絶たず、予約販売という形をとり最良の状態でお届けしています。イチジクというデリケートな果物なので雨や運送にも最新の注意をはらい出荷しています。収穫の始まる数ヶ月前から予約が沢山入り、現在ではなかなかお取り寄せでも手に入りづらくなっている状態です。

 

富田さんは訪れる人に、自分の人生を語るかのように作物への想いや苦労を熱く伝えます。

 

晩秋からの富田さん自慢の柑橘:「ゲンコウ」「仏手柑(ぶっしゅかん)」

ビオレソリエスの収穫の終わりが近づく11月初旬には全国から沢山の注文が入る柑橘があります。それは「ゲンコウ」と「仏手柑」です。

 香酸柑橘「ゲンコウ」
隠れキリシタンの島であった「馬渡島」に原生していたそうです。おそらく外国人の宣教師が種を持ち込み自生していったのだろう、、、等、諸説があります。「かぼす」「すだち」とは似て否なる物です。大きな特徴としては香酸柑橘としてはかなりマイルドで色々な料理に使いやすいということです。ゲンコウは樹上で越冬させるので12月頃からは果皮が黄色になっていきます。この頃にはほんのりと甘さも増してくるのでお酒でサワーにしたり、蜂蜜と合わせてドリンクに最適です。数年前、果皮に頭髪の育毛に効果が期待できるという研究結果が発表され話題になりました。

 

香酸柑橘と言えば「薬味」として焼き魚や鍋に使う用途が多いのですが、ゲンコウはレモンのように色々な料理に絞って使えます。冬の焼き「牡蠣」やお肉料理、明太子などの加工品にかけると臭みも消え格別においしく味わうことができました。僕は薄くスライスして鍋料理に入れたり、皮ごと摺りおろして薬味にします。春から夏にほんのりと甘みがつく増した頃は蜂蜜漬けにして冷蔵庫に常備してお湯割りや炭酸に割って飲みます。レモンよりまろやかな酸味が何ともいえず万能柑橘として重宝しています。

樹上で越冬させることでよりマイルドでほんのり甘い「ゲンコウ」の果汁になります。

 

果汁を搾って薬味にしたり、お酒にサワーとして使えます。又皮ごと摺りおろして鍋料理にも使います。

 

 古の香りに癒やされる「仏手柑」
インド原産で柑橘の原型ともいわれています。仏様の手を広げたような形をしているところから名前の由来がついたようです。僕が東南アジア(タイ、カンボジア、ベトナム)や香港の寺院に行った際に何度も目にすることがありました。日本では主に京都の寺院や神社に飾り物として置かれています。柚の香りを高貴にしたような香りが特徴で風の当たらない所におくと1ヶ月以上日持ちさせることができます。最近は独特の造形美から華道家の方に生け花として使って頂いたり、茶道家の方にも茶席に飾って頂き、仏手柑の砂糖漬けをお茶菓子としておもてなし下さっているようです。

 

縁起物として冬の風物詩になりそうな香りに魅了されます。先日、佐賀の有田の磁器にも仏手柑の絵皿を見つける事ができました。有田焼は400年の伝統があるのでおそらく古来から東南アジアとの交流があったのではないかと思います。仏手柑の歴史を紐解きたくなりました!縁起の良い飾り物として和室だけでなく、モダンな洋室やアジアン風なお部屋のインテリアにもすごく合います。僕も年末には欠かさず玄関や居間に置き、造形美と香りを楽しんでいます。

10月頃から「仏手柑」の圃場には高貴な香りで一杯になります。

 

生食はできませんが輪切りにして砂糖漬けで香りを楽しむ菓子として加工もします。主に生花や神社仏閣の飾り物として年末年始に全国に出回ります。

 

 

イチジクの栽培名人は頑固なまでに自分の信念を貫く。

今や唐津の名物ジジイ(富田さん、ごめん 笑)となった富田さん。以前はミカン農家として代々圃場を守ってきましたが昔に比べ「ミカン」の相場の暴落でこのままではダメだということで新しい品種を探していたところタイミングよく苗木を発見して20年近くかけて栽培に成功(これは本当に壮絶な話になるのですが)しかし、栽培当初は実がならない、なっても美味しくない、、、、試行錯誤の連続でした。
ある日、栽培を諦めて伐採するために木を切ろうと土中を掘り始めた時に「根」の張りが生育のポイントだと気づいたのです。

そこからイチジクの木の根をことごとくスコップで切りまくり、弱い木は抜き、中心となるものだけを選別して木を増やして行ったのです。当然その期間は収入もなく近所からは「変人扱い」。でも、富田さんは自分を信じて3年、5年と時間をかけてきたのです。今ではイチジク以外にも「仏手柑」「げんこう」「トピナンプール」と他の生産者さんとは違う作物の栽培に成功してきたのです。人生をかけたイチジクの栽培、息子さんご夫婦の後継者もできこれから「富田さんのイチジク」は今年も多くの方の笑顔を見せることになりそうです。

 

富田さんは収穫時期になると毎朝、圃場を巡回し1個1個の状態を細かく見て回ります。

 

幻の「黒いダイヤモンド」と言われるビオレソリエス
初夏から秋に旬を迎えるイチジクは「無花果」と書きますが食用にされる部分、皆さんが通常食べている部分は実は厳密には果実ではなくイチジクの花にあたる部分だということをご存知でしたか。イチジクは隠頭花序(いんとうかじょ)と呼ばれる花を付ける木で、果実のように見える部分は、花軸が肥大化したものというところから名前がついたということなんです。果肉の部分をじっくりと見ると、なるほど!と気づきます。*黒イチジクの収穫時期:9月中旬から11月初旬頃まで

日本のイチジクの品種は「桝井ドーフィン(ますいドーフィン)」「蓬莱柿(ほうらいし)」「とよみつひめ」など全国に産地が広がっています。海外原種としては「キング」「コナドリア」(アメリカ)などがあります。今回ご紹介する「黒イチジク(ビオレソリエス)」は新潟、佐賀などに限られています。栽培の管理が難しく安定した品質を保つのが難しいと言われているからなのでしょうか。vegeLaboでご紹介するイチジクは長年お付き合いのある富田さんだけに限定しています。果皮が黒に近い濃い紫になり、1玉1玉に手間をかけて大事に育て高級果実として取り扱われるためにいつ頃からか「黒いダイアモンド」と呼ばれるようになりました。また広く出回らないため「幻のイチジク」とも呼ばれるようになりました。

 

 1個の重さは50gから80g前後、ずっしりと実が詰まり可食部分が多く皮ごと食べられます。(皮にはポリフェノールが含まれています)

秋には栗と並んでイチジクはスイーツの定番としてタルトやケーキにトッピングされ沢山の方の舌を楽しませる時期になります。お客様からよく聞きする保管方法や食べ方ですがそのまま生で召し上がっていただくと ねっとりとした蜜のような濃厚な甘さととろけるような食感を味わっていただけるのですが冷蔵庫での長期保存に向かないため、冷凍庫で保管することも可能ですが冷凍保管の場合品質や味に劣化が生じますのでコンポートやジャムにされることをオススメします。
僕はジャム状にしてヨーグルトやお肉(特に鴨肉と相性がいいですよ)のソース、フルーツサラダのドレッシングに使っています。また、オーブンなどで加熱すると濃厚な甘さが強力になり舌が痛くなるほど(笑)の甘い加工品として保存することもできます。地元ではジャムやドライフルーツとして店頭に並ぶことも多くなりました。

蜜が溢れ出る極上の甘さを楽しんでください

カットすると濃厚なイチジクの蜜があふれ出します。

収穫のタイミングは果皮が濃い紫になり、指で触って柔らかくなり始めた頃です。毎日生産者さんは圃場を回り1個1個食べごろになるものを丁寧に収穫していきます。天候に左右されやすいため雨の日は収穫をしません。秋の日差しをたっぷりと受け美味しくなるまでじっくりと待ちます。


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全国的にも秋に旬を迎えるイチジク。vegeLaboではまだまだこの「黒イチジク(ビオレソリエス)」が広く出回る前から富田さんのご苦労をずっと一緒に見てきたので皆さんにご紹介できるのがとても嬉しいです。ここ2〜3年でお届けしたお客様からの評価がとても高く、いろいろななメデイアでも多数取り上げていただき本当に感謝しております。おかげさまで今では入手が困難でなかお買い求めいただくことができないとのお声もいただくようになりました。でも、ご安心ください!ご予約をいただければ収穫期間中であれば必ずお届けいたします。

 

彼岸花が咲く頃に緑から濃い紫に完熟していきます

今の時期、イチジクの大木の下木漏れ日のなか彼岸花がたくさん咲いています。山の斜面を利用している圃場なので自生して鮮やかに彼岸花が咲きほこります。イチジクの葉に爽やかな秋風が吹いていきます。この景色が好きで訪れた時は畑の中に何時間も過ごしたくなるんです。イチジクも大きさがほぼ決まり後は果皮が濃い紫になり完熟していくのです。秋が深まる唐津浜玉は秋の果物の最盛期を迎えます。福岡から車で約1時間、電車で約90分の距離です。清らかな川も流れる自然豊かな町に行楽としておいでになりませんか。


   彼岸花が咲き乱れ、圃場は色鮮やかな季節を迎えています。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。皆さんにも是非、「名人」と呼ばれる富田さんのイチジクを召し上がって頂けると嬉しいです。

 

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