猫のまんま夏の段スピンオフ「またね」

novel

 

【虹の橋】 出典:Wikipediaより


虹の橋(にじのはし、英語:Rainbow Bridge)とは、飼っていたペットを亡くした人々のあいだで語られている、比喩的な場所、または神話的な場所のことである。また、この場所をうたった散文詩韻文)のことである。伴侶動と一緒に過ごした日々は実際に失ってしまった者からすれば喪失感が大きすぎる。 然し乍らこの詩(比喩的・神話的・散文的ではあってもまた必ず逢えると謳っている言葉には、少なからず世間で言われているペットロスより助けられることは大きいであろう。

「虹の橋」 作者不詳

天国のちょっと手前に
虹の橋と呼ばれる場所があります。
この世界で誰かと特に親しかった動物は死を迎えると、虹の橋に行くのです。
そこには親しかった彼らのために用意された草地や丘があり、
動物たちは一緒に走ったり遊んだりできるのです。

豊富な食べ物に水、お日様の光があり、
動物たちは暖かく心地よく過ごします。

病にかかったり年老いた動物たちは皆、健康になって元気になります。
傷ついたり不自由な体になった動物たちも、また元通りになって力強くなります。
まるで、過ぎ去った日々の夢のように。
動物たちは幸せで充実していますが、一つだけ小さな不満があります。
みんな、とても特別な誰かと、残してきた誰かと会えなくて寂しいのです。
彼らは一緒に走ったり遊んだりしています。しかし、
ある日、一匹が突然立ち止まり、遠くを見つめます。
その瞳はきらきらと輝き、
身体はしきりに震え出します。

突然、彼は群れから離れ、緑の草を速く、速く飛び越えて行きます。

彼はあなたを見つけたのです。
そして、ついにあなたとあなたの特別な友だちが出会うと、再会の喜びにあなたは抱き合います。
そして二度と離れることはありません。

幸福のキスがあなたの顔に降り注ぎます。
あなたは両手で再び最愛の友の頭をなで回します。
そして、あなたは信頼にあふれる友の眼をもう一度覗き込みます。
その瞳は、長い間あなたの人生から失われていたものですが、心から決して消え去りはしなかったものです。

それから、あなたは虹の橋を一緒に渡って行くのです。

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「なあ、そい。見えるか?」

「うん、きいちゃんも見えてるの?」
「やっぱりな、でも匂いがしないんだよ」
「そうだよね、3匹いるよね。」

クンクン、、。

「やっぱり臭わないや」

シャー、シャー

「誰だお前たち!どこから来たんだ!ここはおいらたちの家だぞ。」

「きいちゃん、そいくん。びっくりさせてごめんなさいね。私は『とまと』父ちゃんと随分と長く暮らした猫よ」

「やあ、僕は『太郎』唐津で父ちゃんと暮らしてた猫だよ。」

「こんばんは、私は『ちい』父ちゃんが学校を卒業して初めて飼ってもらった猫よ。」

「な、なんだ、、、お前たち!」

「驚くのは無理もないわよね、、、。人間の世界ではお盆といって、なくなった人たちがひと時だけ戻れる時期なの」
「僕たちね、『虹の橋』の神様が父ちゃんが新しい猫たちを飼ってるようだから、幸せに暮らしてるかどうか見て来てごらんって、今日だけ戻してくれたんだ。」

「二人とも元気な、いい子たちね、、父ちゃんも幸せでしょう?」

「、、、う、うんまあ」

「とってもいい子だって父ちゃんもいつも私たちに知らせてくれてるもの」

「きいちゃん、父ちゃんが前飼ってた猫たちの写真があるの僕知ってる。毎朝父ちゃんお祈りしてるもん。」

「あっ!おいら、お腹空いててお供えのご飯食べたことがある!ごめんなさい。」

「はは、いいんだよ。僕もお腹空いたら同じことするもん。」

「えへへ、、、ごめんなさい」

「いいのよ、きいちゃん、そいくん。私はね父ちゃんと本当に長く暮らせたの。福岡で生まれたてで雨の中、捨てられた私を拾ってくれたのが父ちゃんだったの。福岡から宮崎、それから大阪、唐津。本当に長く幸せに暮らせたわ。父ちゃんが車で大阪から佐賀に来るときも私をカゴに入れてずっと運転中も撫でてくれたの。私はもう15年も一緒にいたから体もどんどん衰えていったけど、最期は父ちゃんがお家で看取ってくれた、ずっと抱っこしてくれたのよ。」

「僕は生まれつき体が弱かったんだ、それでも先の『とまと』姉ちゃんが亡くなってすぐに引き取ってくれた。肺が弱かったからすぐに水が溜まって熱出したり、具合が悪くなったら夜中でも父ちゃんがすぐに病院に連れてってくれた。でも、僕の場合は父ちゃんが病院の先生に相談して少しでも可能性があるならって病院の酸素室で治療することを決めたんだけど、僕の体力がもたなかったんだ。だから父ちゃんには看取ってもらえなかったんだ。でも、家に帰る前に僕をずっと撫でてくれたから、父ちゃんの手の暖かさは今も忘れてないよ。」

「私はね、父ちゃんがが学校を卒業してすぐに飼ってくれたのよ、私も長崎から千葉、横浜と父ちゃんとずっと一緒だった。でもね、私も腎不全になって横浜の病院で最期を迎えたの。父ちゃんが病院から帰るとき『父ちゃんありがとう!ごめんね。』って言ったのきっとわかってくれたと思うの。私は今、父ちゃんの実家のお墓で眠っているわ。」

「えっと、えっと。父ちゃんが最初に飼った猫が『ちい』姉ちゃん、次に一番長く父ちゃんと暮らした『とまと』姉ちゃん、そして唐津で一緒だったのが『太郎』兄ちゃんだね?」

「うん、そうよ」
「そう、そう」
「うん、そうだよ」

「そっか、だから父ちゃんが毎朝、お祈りしているのは写真の3匹なんだね」

「僕もまだ父ちゃんの思い出の中にいれて嬉しいな、僕は一番短かったのが残念だったけど。大好きだったよ、父ちゃん。」

「きいちゃんもそいくんも父ちゃんのこと好きでしょ?」

「うん!」
「ま、まあな、もっと美味しいご飯くれるともっと好きになるけどな、おいら」

「きいちゃんたら、、やっぱり食いしんぼね。」

「そうなんだよ、だからこんなに太っちゃって、、、。」

バシ!

「そい、余計なこと言うな」

「きいちゃん、僕もねたくさん食べたいんだけど、僕生まれつき喉に少し障害があって食が細いからいっぺんにたくさん食べると、吐いちゃうんだ。」

「そうか、それでいつも少しづつ、残しながら食べてるんだね。おいら、横取りしちゃって。ごめんよ。」

「きいちゃんだから、諦めてるよ、もう」

「ふふ、、、」
「はは、、、」
「やっぱり、二人は仲良しね」

「父ちゃんね、私たちが『虹の橋』を渡って、もう猫は飼わないって誓ったんだけど、私たちが一生懸命お願いしてたの。どうか、私たちの仲間を一匹でも幸せにしてあげてって。」

「僕も、桜の咲く頃にね一度だけ生まれ変わって父ちゃんにお願いしたんだ。『きっと父ちゃんを探してる子達がいるよ』ってね。」

「そ、そうなんだ。おいらたち、父ちゃんが面会に来てくれた時「大好きな匂い」がしたんだ。だから、『よろしくね!』って挨拶したんだ。」
「そうだったよね、僕たちいつもトライアルに出てもご縁がなかったから、いつも常連の『出戻り組み』って保護猫のみんなからからかわれてたもの。」

「もう、大丈夫よ。そいくん、きいちゃん!父ちゃんとずっと幸せに暮らすのよ。私たちの分まで。」
「僕の分もね。」
「私の分もね。」

「うん、ありがとう。僕も最後は父ちゃんに抱っこされて『虹の橋』を渡るよ。」
「僕も、父ちゃんにギュッっと抱きしめてもらうんだ。」

「あ、あれ?みんな、どこ行くの?」

「もう、私たちも幸せな気持ちになれたし、安心したから帰るわね。」

「えっ、父ちゃん起こすよ!おいら」
「大丈夫!さっき、父ちゃんの夢の中で、私たちちゃんとお別れしてるから。」

「でも、せっかくなのに、、、。」
「いいんだよ。」
「二人とも長生きして父ちゃんと幸せに暮らしてね。きっとよ!」
「きっとだぞ。」

「あ、おいらもう少し話が聞きたい、、、」

「『虹の橋』には門限があるんだ。」

「そ、そんな。」

「きいちゃん、そいくん」

「またね」

「きっと、私たちまた会えるわ。きっと。」

「またね」

 

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・・・・次回に続く

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