野菜ソムリエYasu×Hiro のベジフル対談: 第1回「 カナダと日本のベジフル事情ってどうよ?」
世界中の皆さんにどうしても「野菜や果物の魅力」を一人でも多くの方にお伝えしたいという強い思いから、美味しい野菜と果物に目がない、カナダ・バンクーバー在住のHiroと福岡・糸島在住のYasuがつ、ついに立ち上がりました!(笑)それぞれの国の自慢したい農作物のことや、日頃から感じる野菜・果物にまつわる色々なことを若いおっさんHiroと本物のおっさん(笑)Yasuがあれこれとしゃべり倒す「毎月の連載対談」です。どうぞ、最後までお付き合いくださいね。
対談第1回目:「カナダと日本のベジフル事情ってどうよ?」
お国が違えばそこで販売されている農産物も千差万別、売り方もそして買い方も違うようです。それぞれの国の量販店の店頭の様子を二人の視線からお話ししています。
Y: Hiroさん「こんにちは〜」、あっ、そっちは夜でしたね。改めて「今晩は〜」いつもいろんな情報ありがとうございます!珍しい果物や野菜にビビってま〜す。さすがカナダって感じで。(本当は糸島野菜がいいに決まってるやんと内心、自信満々の気持ちを抑えながら既に臨戦態勢の大人げの無い本物のおっさん 笑 )今回は「ベジフルポケット」と「ベジラボ」のコラボ対談が実現して本当に嬉しいです。ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
H: yasuさん「こんにちは~。こちらこそ、よろしくお願いします!」
Contents
野菜の魅力に目覚めたきっかけ / 野菜ソムリエの資格取得を目指したきっかけは?
二人が野菜ソムリエの資格を取った理由には「単に仕事としてのスキルアップ」を目指すだけでなく、それぞれが野菜や果物を愛してやまない想いがありました。
ところで、Hiroさんが野菜の魅力に目覚めたというか、ソムリエの資格を取ろうと思ったきっかけって何ですか?
Y: 僕は通販会社勤務時代に九州の農産物の開発をしてて、宮崎の有機野菜野の町綾町を訪れたときに、どうしても苦手で食べられなかった「ピーマン」「人参」(おこちゃまかっ!とHiroさんから突っ込まれる)を畑に入った時に生産者の方が手渡ししてくれて断ることもできずに、恐る恐るかじってみたんですけど、、、。
*綾町は、宮崎県の中西部に位置する町で、東諸県郡に属する。「有機農業の町」、「照葉樹林都市」などをスローガンとする町おこしの成功例として知られ、自然の中での人間らしい生活を求める全国各地からの移住者が後を絶たない。 「日本で最も美しい村連合」の一つ *wikipediaより
「えっ、ピーマン、こんなにえぐみがないの?人参甘っ!柿みたい。」と衝撃を受けてボリボリかじりました。野菜がこんなに美味しいのかって思いましたね。それから、綾町に魅了されて移住し、生産者さん達と取り組み産直の仕事を始めました。それで販売のために売り込みに量販店とか沢山営業に回って、、、。でも、当時は野菜コーナーには「トレーサビリティ」や「生産者さんの写真」はあっても野菜の特徴や美味しい食べ方、その「農産物の背景にある物語」が見えてこない。じゃあ、自分がpopを作って野菜と一緒に並べて貰うためにも、もっと野菜の機能性や特徴を勉強しなきゃって思って資格を取ろうって決めたんです。
あれ? Hiroさん、Hiroさん、 起きてます?長くなってごめんなさい。
H: 起きてますよ〜(笑)。野菜の魅力に目覚めたのは、20歳の頃ですね。
地元の専門学校を卒業してから、これまた地元の大型スーパーマーケットに入社しました。そこでまずはじめに「どの部門で働きたい?」っていうアンケートがあったのですが、「え・・・。お肉はちょっと申し訳ないけど匂いが苦手だし、魚はお刺身とか食べないし、お惣菜は油っこそうだし(惣菜部門で働いている方すいません)、デイリーはなんか興味があまり持てないし・・・」という消去法で、青果部門で働くことになったんですね。
そのときは青りんご(王林とか)があることとか、キャベツにも種類があることとか知らなかったし、見たこともないようなキノコが売り場にいっぱい並んでいて、相当ヤバかったですね(汗)「野菜果物知らない人が野菜果物売って大丈夫かな?」って。でも「正社員としての初めての仕事だから頑張らないと!」と思って、青果売り場に並んでいる品目の名前を全部メモして少しずつ覚えました。それからちょっとずつ「野菜果物ってなんか楽しい!」と野菜果物の魅力に気付いて、もっと野菜の勉強がしたくなって、野菜ソムリエの資格を取得しました。毎日仕事が終わってジムに行って、ジムの休憩室で閉館前まで勉強していたのが懐かしいです(笑)
Y: へ~そうなんですね。(まったく人の話を聞かない、B型の悪い性格が頭角を現す 笑)でも、その選択のおかげでこうやってご縁ができたんですよね。本当にありがたいです。Hiroさんのブログ見てても凄く専門性高いし、面白いと思います。特に果物の記事なんかは本当に勉強になったし、目の付け所が「きら~ん(笑)」という感じで興味をそそられました。これからも、いろんな情報交換をお願いしますね。
んじゃっ!記念すべく第一回目の今回の本題に入りま~す。
カナダの「ベジフル事情」
バンクーバーに在住5年目になるHiroさんが日頃から目にするカナダ特有の青果の売り場の様子をお話します。日頃の生活に欠かせない農産物やトレンドがありました。カナダではないのですが、世界には何とおしゃれな「ブラックマーケット」の存在も。
H: 日本のスーパーに勤めていた頃は、本当に見た目の揃ったものばかり入荷して販売していました。それが普通だと思ってたんですよね。実はカナダも規格はちゃんとあって、お店では見た目の良いものが販売されています。ただ、日本ほど厳しくはないように思います。その理由は、裸売り+量り売りの野菜果物がとても多いからで、例えば一人暮らしの人は小さいキャベツ1玉を選ぶし、家族4人暮らしの人はキャベツでも大きい玉を選んだりしますね。裸で陳列されているりんごも基本量り売りなので、ある程度のサイズ感は揃っているものの、自分の好きな大きさのものを購入することができます。
(カナダの一般的なスーパーにて)
また、カナダでは基本的に裸で野菜や果物が販売されていることに加えて、見た目が良いから大量に陳列するのが良しとされているので、店頭で売れずに腐るものもすごく多いですね。トマトや桃などの傷みやすい野菜・果物もとりあえず山積み(笑)
以前カナダの八百屋で働いていたのですが、売れ残って捨てる野菜・果物の多さに驚いた経験があります。ぼくが働いていたお店では、傷んだものは、農家のおじさんが肥料なんかにしているようで罪悪感少なめでしたが、それでも量が多すぎる!と思っていました。(もちろんお店によると思うのですが)
その点、日本は「なるべく野菜果物を腐らせないようにしよう(=無駄を減らす)」っていう意識がすごくあるので、パックされた商品が多いですよね。一長一短だなーといつも思います。ちなみにカナダの話ではないのですが、フランスを本拠地にしている「カルフール(Carrefour)」というスーパーを知っていますか?カルフールでは売り場の一部を黒で統一して、(”違法”な)規格外野菜を販売するブラックマーケット(闇市)が以前話題になりました。
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#ClioAwards 2018 Gold Winner: Carrefour: Black Supermarket by Marcel http://j.mp/2DmwkKn@ClioAwards 4 2:34 – 2018年9月26日 Ads of the World™さんの他のツイートを見る
普通に規格外野菜を集めて販売しているところなら色々あると思うのですが、闇市的な雰囲気を出して、ポスターにも実際の生産者の方を採用していて、マーケティングが見事だと思いました。その奇抜な戦略で「規格外野菜の何が悪い」と、売り場内だけじゃなくて世界中に訴えることができたわけですから、成功ですよね。
そんなわけで、カナダでも規格外野菜の販売が今よりもっと広がればいいなー、なんて思っている今日この頃です。
Y: 確かに。野菜売り場では鮮度が重視されるから「在庫」は店舗にとっても頭が痛い!かといって品揃えや入荷量の目論見が外れると売り場の責任問題にも繋がるし。お客様にもできるだけ直接ご来店頂いて目で見て、触って(触っちゃ怒られる種類もあるけど 笑)、香りを楽しんで頂きたいですもんね。フランスの「ブラックマーケット(闇市)」は凄く気になります!ポスターもコンセプトも全部が「ブラック〜」みたいな。、、、でも、おしゃれ!ここの企業日本に「黒船化」してくれないかなあ。日本の市場に激震が走りそうですが、、、。
実は知人の社長が産地からの一括流通を組み立て、「ホワイト〜(笑)」な規格外の農産物の販売を小さな店舗で多店舗化され、残りそうな物は(これは野菜の宿命です、、悲しいかな)お弁当やサラダなどの惣菜として上手く利用されています。僕は農産物販売の革命が起きたかと思うほど素敵な事業展開だと思います。「イケメンの若手社長」(←ここ大事!笑 見事に多くの女性客を虜にしています。)自ら産地に出向き、店舗に立つ、そしてお客様とのコミニュケーションをとりながら生のデーターリサーチをされているんです。日本古来からある「八百屋方式」をビックデーターと合わせ、流通の仕組みをIT化した成功事例だと思います。
日本の「ベジフル事情」
日本では最近、郊外のスーパーがかなり広い売り場面積をもち、車で行きまとめて大量に購入するスタイルが随分と増えましたが都心部では激戦地区なので個性とコンセプトを明確にした店舗が人気 。 *あくまでも個人の主観であり、関連される業界の特定の方々を擁護・批判する意図ではありません。
Hiroさんからいつも見せてもらう、量販店の農産物の販売のスタイルって日本と随分違うなあって思ってました。カナダって欧米のマルシェスタイルというか裸で「ど〜ん」みたいな強烈な印象がありますが。逆に日本の量販店は規格はきっちり、きっちり決まって秀品だけが綺麗に包装されて並んでる。お客様も綺麗な方がいいのだろうけど、個人的には値段を安くしても規格外品や不揃いも並べて欲しいなあって思ってました。でも、同じような考えを持つ企業も実は存在してて、日本では「無印良品計画」が先駆者だと思います。でも最近は随分とオーガニック系の店舗でそんなうれしいレイアウトや販売スタイルが定着し始めてワクワクしているこの頃です。
Y: 日本で農産物を購入するパターンは量販店(デパート・スーパー)、直売所、八百屋さんがほとんどですよね。ここ10年近くはネットでのお取り寄せスタイルも増えてきましたよね。高齢化が進む中、重い農産物(お米・や根菜類)は郊外に車で買いに行く方々も多いですね。画像は福岡市内の大型スーパーマーケットでお取引先の企業の新店舗グランドオープンのお手伝いに行った時の店内の様子です。売り場面積も広いし目を引くデイスプレイがしたかったのでトラクターを入れてみたり、一部の農産物を欧米風の売り場にしたかったのもありました。他の陳列は通常のスーパーとは変わりありません。敢えていうならば産直(生産者さんたちが引き立つ)をメインにした構成になっています。種類も豊富で九州の台所的な福岡の元気を感じられましたね。
(福岡市内の某量販店のグランドオープンをお手伝いした時の店内の様子)
次は東京都内のデパートの中の高級志向農産物売り場です。こちらは実は僕が学生時代にアルバイトしていたところで、当時の先輩が農産物の最高責任者になられているので、年間を通じてお世話になっている企業です。4〜5年前はトマト(糖度重視)、やカラフルなミニトマトが流行っていて「赤・黄・橙緑・茶色・紫・白・マーブルカラー」と売り場が華やかでしたね。又予め容器に詰め合わせるのではなく、お客様の好きな色を選んで買って頂くという「量り売り」のスタイルを提案してみました、、、。結果は特定の色が売れて生産者さん達への受発注や売れない色の在庫管理が大変だったということで短命に終わりましたが、、、。(涙)
トマトは本当に奥が深くて、「流行っているお店はトマトの品揃えが充実している店」というのが定説でしたね。今はトマトの人気の主流は「糖度・酸味のバランスと食味」と言われていて、「原点回帰」のような気がします。年配の方は昔ながらのトマト特有の香りを求められますし、料理好きの方はイタリアトマトを中心とした「クオーレ・ディ・ブエ」、加熱するタイプの「サンマルツァーノ」「シシリアンルージュ」やトマトソースやドライトマトを作る目的の品種を目当で来られます。
(東京の某デパートでトマト・ミニトマトのコーナーをお手伝いした時の店内の様子)
Hiroさん、知ってました?トマトってさっと湯煎したり、直火で焼いて、水につけると皮が剝きやすかったり、ミニトマトも串焼きにして炙ると甘くなってコクがでるんですよ。個人的には最近メニューでトマトに「焼きを入れて(笑)」のメニューを絶賛推奨中です。あと糖度重視ではないミニトマトでもアヒージョにぶっ込むと(下品なオヤジ炸裂!)美味しいんですよ。日頃どんな食べ方してるんですか〜?
H: トマトいいですよね~!日本にはフルーツトマトなんかもあると思いますが、カナダには甘さを追求した品種は見かけませんね。でも、ローマトマトなど調理向きのトマトが多いので、個人的に嬉しいです。夏になるとすごく色んな品種のトマトが出回るので、毎年楽しみにしています。ぼくが料理が苦手(汗)なので、すごくシンプルな料理しかしないのですが、大きなトマトをスライスしてオリーブオイルをかけて、オーブンでローストするのが好きです。あと、赤や黄、緑、茶などカラフルなトマトをサラダに使うことが多いですね。サラダはなるべくカラフルにしようと、トマト以外にも色んな食材を入れて大量につくります(笑)
「カナダと日本のベジフル事情ってどうよ?」今回のまとめ
お国は違えども、農産物は自然相手の人の手がかかる無くてはならないもの。生産者さんやお客様と販売に関わる多くの人たちによって成り立っています。もちろん廃棄処分(昨年の日本での「恵方巻き」の大量廃棄は凄く心が痛みました)だけは避けたいですし、年々目まぐるしく変化する気候状況も合わせると、農産物の需要と供給のバランスはいつ壊れてもおかしくないところまできています。
Y: 今、日本でもマルシェやオーガニックスタイルが流行し始めて人気があります。日本市場に出回る有機野菜のシェアは、実は野菜全体の1%前後。2020年度の東京オリンピック・パラリンピックで日本に来られる沢山の外国人の方々(特にベジタリアン、ビーガン)をどのように日本がおもてなし(食事のご提供)ができるのか、東京出張の際は企業の方々とよく話しをします。少しずつではありますが、準備が始まりました。微力ではありますが僕もお手伝いに参画させていただけるのは光栄でもあり、責任重大な仕事となりそうです。
僕は「対面形式」での農産物の販売が好きです。下の画像はお取引先のスーパーで月1回程度、「試食販売」でお取引のある大好きな生産者さん達の農産物・農産加工品のご紹介をさせて頂きました。パッケージやPOPだけでは伝わらない産地の背景や生産者さんのご苦労や食べ方や機能性をご来店されるお客様にお話ししていました。(正確には世間話が多くて、、、 笑。例えば「嫁姑の関係問」や「おばあちゃんの体の不調」「ご主人の悪口」までも飛び出す始末でしたが、、。)カナダも日本でもマルシェが人気なのは「ここ」のような気がするんです。採れたての新鮮な農産物の魅力もそうなのですが、生産者さん(又は代理の方)と会話を楽しんで、値切って(笑)やりとりできるスタイルがあるからだと思うんです。
( 大好きな生産者さんのトマトとジュースの試食販売をやった時の様子)
H: そうですね。ぼくが暮らすカナダBC州バンクーバーでは、一年を通してファーマーズマーケットが各地で開催されていて、特に夏の時期は多くの人で賑わいます。そこでは、生産者の方が自分で育てた野菜や果物を販売しているので、知らない野菜や果物を見つけたときでも、生産者の人に直接尋ねることができるので、安心して購入できます。そんなスタイルのお店が今後増えればいいですね。
Hiroさん!僕らも野菜ソムリエとして、多くの生産者さんや農産物に耳を傾け、肌で感じてそれを伝えていくことが大切だし、とても素敵な仕事だと思うんですよね〜。頑張って情報配信していきまっしょい!
今日は本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。
Y: 毎日がワクワクして、発見と感動の連続です。楽しくて、楽しくて「やめられまへんな〜この仕事」(笑)
皆様、いかがでしたか? 第一回目の対談、最後までお読み頂きありがとうございました。
次回も皆様が興味を持っていただけるようなテーマをHiroさんとYasuの二人で見つけてまた喋り倒しますよ〜。(笑)これからも、是非ご覧下さいませ。では、次回もどうぞお楽しみに〜。
<対談者のプロフィール>
Hiro profile
カナダ・バンクーバー在住の野菜ソムリエ。仕事はライター。日本とニュージーランドの大型スーパー青果部門、カナダでは元八百屋勤務した経歴を持つ。野菜・果物の情報を自身のブログ「野菜ソムリエHiroのベジフルポケット」にて発信中。その他にもHiro offcialのTwitter、Facebook、Instagramも不定期更新中。
Yasu profile
福岡県糸島市在住の野菜ソムリエ・フードコーデネイター。vegeLabo の運営、国内の外食関係企業、大手量販店、農産物加工企業にメニュー作りから生産者と契約した農産物の提案、卸販売、コーデネイトをしている。デザインワークとして野菜に関わる媒体のデザイン・ブランデイングもおこなう。 Facebook, Instagram も随時更新中。
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